当フォーラムについて
会長ご挨拶
細野 助博
中央大学名誉教授
山梨県笠取山の山頂下の水干を源流に、東京都と神奈川県の県境を流れて東京湾にそそぐ全長138キロにわたる多摩川は、万葉集歌として編まれ、流域を潤し、いにしえより人々に慕われてきましたが、同時に「暴れ川」として流域に災難をもたらす怖い存在でもありました。
この日本を代表する多摩川をキーワードにして、「市民中心の」魅力的地域づくりを目的に「美しい多摩川フォーラム」は2007年7月に設立されました。
当フォーラムは「美しい多摩川100年プラン」を掲げ、「経済・環境・教育文化」の3つの運動の柱に沿って、1年ごとに具体的活動を着実に続けて参りました。ところが思いもかけない新型コロナ感染症の影響で活動の大半を根本から捉えなおすことも必要になりました。時代の歯車を動かすのは、時の精神だけではなく、むしろ人知を超えた自然の力だということを私たちは再び学んでいるわけです。
コロナ禍を克服した暁には、より高い活動成果が実現できますように、皆様に当フォーラムに対して今まで以上に、変わらぬご理解、ご支持、そしてご協力をいただきたいと考えております。会長として心よりお願い申し上げます。
2020年10月1日記
設立の経緯
少子高齢化が進行し、地域経済も低迷している状況下、「地域の活性化」「地域の自立」は、地域社会における喫緊の課題となっております。こうした課題を実現していくためには、地域に暮らす人々が、その地域だけでなく、多摩地域全体の将来の姿を見据えた地域づくりに取り組むことが、何より大切であると認識しております。
こうした中、多摩川の上・中流域圏で事業を展開する、協同組織金融機関の青梅信用金庫は、信用金庫の原点でもある「相互扶助の精神」に基づき、どのように社会的責任(CSR)を果たし、運命共同体として地域と共に生きていくかを考え、地域社会の課題である地域の活性化や自立を目指した地域づくりのための受皿組織として、2007年7月21日に美しい多摩川フォーラムを設立し、事務局を同金庫内の地域貢献部に設置しました。
産声を上げた美しい多摩川フォーラムは、「人々が住みやすく、活力ある地域づくりを進めていくためには、その地域に暮らす人々のみならず、行政機関、地域で事業を営む法人、NPO等団体、大学など、地域の各主体が、広域的な連携・協働による地域づくり運動を行っていくことが重要である」と考えました。
そこで美しい多摩川フォーラムは、地域づくりのために、地域の人々から最も共感が得られる多摩川をシンボルに掲げ、多摩川水系の流域周辺地域の各主体がイコール・パートナーとして連携・協働し、水環境を守りながら、地域経済の活性化に取り組み、次代を担う子どもたちへの教育を通じて、地域の人々(多摩圏民)が生きがいを持って、自立した生活が送れるような地域の形成を目指し、活動を続けてまいりました。そして2017年には、設立10周年を迎えました。
これからも、清らかな水を湛える多摩川をシンボルに、地域の人々を強い絆で結び、ひいては地域の共生・発展につなげてまいりたいと考えております。また、これらの広域的な地域づくり運動の息の長い継続的な取り組みを通じて、地域に暮らす人々のモラルの向上を図り、自信や誇りが醸成するように努め、さらには、次代の地域を担う若者を育成してまいります。今後も、地域づくりに関心のある方のご参加を心よりお待ちしております。
当フォーラムの概要
美しい多摩川フォーラムは、多摩川を地域づくりのシンボルに掲げ、多摩川水系(多摩川・秋川・浅川・玉川上水等)の流域周辺地域の各主体(市民、事業者、行政、大学等)とイコールパートナーとして連携・協働し、持続可能な地域社会としての美しい多摩づくりを目指しています。
美しい多摩づくり運動の目的を達成するため、経済・環境・教育文化を運動の3本柱に位置付け、多様な価値観を有する会員が対等に議論し、緩やかな合意のもと、連携・協働しながらフォーラムの活動を息長く実践しています。
当フォーラムの組織形態は任意団体で、当フォーラムの会員は、フォーラム運動の3本柱に則して設置される3つの活動部会(地域経済活性化部会、環境清流部会、教育文化部会)に自由に参加でき、会員相互間で課題の設定や解決のために対等に議論をおこないます。一方で、緩やかな合意を得て、総会で実施が決まった事業については、ボランティア精神で自由に参加することができます。詳細は規約をご覧ください。
進化・発展する
「美しい多摩川100年プラン」
美しい多摩川フォーラムでは、経済・環境・教育文化を運動の3本柱に捉え、100年先まで続く美しい多摩づくり運動の全体を「美しい多摩川100年プラン」と名付けています。
3本柱の中で最も太い幹にあたる経済では、地域経済の活性化は、美しい多摩の桜による観光まちづくりからとの考えから、「多摩川夢の桜街道プラン」を推進しています。2008年にオープンした観光サイト
多摩川夢の桜街道公式ホームページ が2019年にリニューアル・オープンし、さらに多くの方に桜の札所巡りを楽しんでいただいています。また、春になると、桜ウォーキングや桜の語り会も開催しています。
2014年には、秋からの新酒シーズンにあわせ、西多摩地域に点在する5つの酒蔵を多摩川酒蔵街道と名付け、紅葉を満喫しながら酒蔵を巡る旅をPRし、交流人口増加による地域経済の活性化に取り組んでいます。
環境では、地球環境問題への取り組みは、身近な水辺の実態認識からということで、「多摩川一斉水質調査プラン」を掲げ、毎年6月に多摩川一斉水質調査を実施しています。また毎年11月には、美しい多摩川クリーンキャンペーンと称した多摩川広域清掃大会を開催し、ゴミを拾うことでマイクロプラスチック等の環境問題を身近に感じてもらう取り組みをおこなっています。2012年からは、水環境のリーダーを養成する 多摩川”水”大学講座を毎年開催しています。
教育文化では、次代を担う子どもたちへの環境教育は不可欠であるとの考えから、「多摩川教育河川ネットワークプラン」を掲げ、流域各地で活動する水辺の活動団体等のネットワーク広報紙「多摩川っ子」を発行し、8月には炭焼き体験と水辺の交流会、12月には多摩川子ども環境シンポジウムを開催しています。
一方、文化面では、多摩地域に古くから伝わる言い伝えや昔話を掘り起こした「多摩の物語」を小冊子にまとめ、語り伝えていく活動を2015年からおこなっています。
このように、私たちの活動は、皆さんと考え実行し、どんどん進化・発展していくプランとなっています。あなたなら、これらのプランにどのようなアイデアを加えますか?100年先の多摩の明るい未来を目指して、ぜひ一緒に活動しましょう!ご入会をお待ちしております。
美しい多摩川フォーラムとSDGs
2015年9月、ニューヨークの国連本部で「国連持続可能な開発サミット」が開催された際、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」=SDGsが採択されました。SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と言います。SDGsを簡単に説明しますと、2016年〜2030年までの15年間で世界が達成すべき17のゴールを表したものです。
美しい多摩川フォーラムは、2007年の設立当初から「持続可能な地域社会としての美しい多摩づくり」を目指しており、手前味噌ではありますが、SDGsが採択される8年前から地道に取り組んでまいりました。唯一、SDGsと異なるところは、ゴールが2030年ではなく、100年後であるというところでしょうか。
当フォーラムは、17のうち特に上記の8つについて、今までも、これからも、持続可能な地域社会に向けた、息の長い取り組みを続けてまいります。